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2025.10.17

日本の伝統を未来へ紡ぐ、八芳園の新メインロビー

2025年10月、八芳園は創業以来最大規模の改修工事を行い、約8カ月間の休館期間を経て、全館リニューアルオープンを迎えました。
おふたりと、大切なゲストの皆様を最初にお出迎えするメインロビーも新たな装いへと大きく生まれ変わりました。

そのロビーの壁面を飾るのは、日本を代表する水墨画家と組子職人が手がけたアート作品「光風庭伝(こうふうていでん)」。
受け継がれてきた日本の伝統技術と現代の感性が融合したこの作品には、職人たちの技と想いが息づいています。
こちらの記事では、細部にまで宿るこだわりや、創り手たちが大切にしてきた想い、日本の美意識をご紹介いたします。

01. リニューアルしたメインロビーについて

02. 水墨画家/小林東雲氏について

水墨画とは、水と墨だけで描かれる日本の伝統的な絵画。
墨の濃淡やにじみ、ぼかしなど、わずかな表情の違いが豊かな情景を生み出します。

今回の「光風庭伝(こうふうていでん)」の原画は、“太陽”と“月”そして庭園に息づく“松”や“竹林”を描いた四幅からなる作品です。

太陽を描いた「祥陽(しょうよう)図」には、夜明けを告げる光のように、新たな挑戦や発見が未来を切り拓くきっかけとなるよう願いが込められています。
一方、月をモチーフにした「清月 (せいげつ) 図」は、「願いが叶う」とされる三日月を描き、八芳園を訪れる方々の願いが実を結ぶようにという想いを表現しました。

昼と夜をあらわす太陽と月は、日々の移ろいをあらわす“時”の象徴。
小林氏の「日本ならではの美しい庭園が脈々と受け継がれ、未来へと繋がっていくように」という願いが込められています。

竹林を描いた「竹韻(ちくいん)図」は、「祥陽図」に描かれた太陽の光が差し込む竹林を表現しています。
竹の間を抜けるやわらかな光の先には、明るい未来への願いを込めて、夫婦鶴の姿が描かれました。
一方、松をモチーフとした「松聲(しょうせい)図」は、八芳園を象徴する赤松を中心に据え、“四方八方どこから見ても美しい庭園”という名の由来を映し出しています。

03. 組子職人/木下正人氏について

釘を一切使わず、薄い木片を正確に組み合わせて紋様を描く組子細工。
ひとつひとつの紋様が重なり合うことで、まるで絵画のような美しい表現を生み出します。

かつては障子や欄間などの装飾として親しまれていた組子ですが、時代の移り変わりとともに、その技を継ぐ職人は減少の一途をたどっていきました。
しかし木下氏は、伝統を守りながらも新たな可能性を追求し、照明やアートパネルなど現代の暮らしにも取り入れられる作品づくりに挑戦。
全国で唯一の“組子専門の職人”として、手仕事の美しさと、ものづくりの心を次世代へと受け継いでいます。

今回の作品制作にあたり、水墨画に描かれた松葉や竹葉を表現するため、木下氏は伝統紋様を基にしたオリジナルの紋様を考案しました。

松の葉には、色味の異なる2種の朴の木を用い、水墨画の濃淡を繊細に再現。
竹の葉は、伝統紋様「重ね竜胆(りんどう)」をアレンジし、3種の朴の木を組み合わせることで表現しました。

細やかな葉の表情を組子で描くことは極めて難しく、木下氏は彫刻による表現も検討するほど、試行錯誤を重ねたといいます。

04. 組子アート 「光風庭伝」のご紹介

小林東雲氏による原画には、水墨画の様々な技法を用いた精緻な表現が施されています。
松の葉の繊細な描写は、筆先が開いた状態でサッと筆を走らせる伝統技法によるもの。
また竹林に差し込む光は、乾いた刷毛で墨を掃き取るようにし、淡く柔らかな光の表情を生み出しました。

そしてその水墨画の奥行きを、木下正人氏が見事に表現。
12種類以上の紋様を活かし、材の厚みや色合い、紋様の密度を緻密に調整することで、水墨画特有の“濃淡” を巧みに表しました。

また、直径1mの太陽の部分には高度な技術を要する紋様「八重麻の葉」を敷き詰めることで、荘厳な趣を生み出しています。

組子細工の太陽には金箔を、月にはプラチナ箔が施されており、福岡県大川市の家具職人が手掛けました。
太陽部分だけでも約140枚の金箔を使用し、厚さわずか0.1ミクロンの箔を手作業で丁寧に貼り合わせました。
繊細な線の上で美しく輝くその仕上がりは、まさに熟練の職人技が成せる業です。