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美しい日本の再発見にもつながっている。

Interview

佐藤 百々香
壺中庵事業部 調理チーム
リーダー 2021年新卒入社

大人にあんな顔をさせられる
料理をつくりたい。

幼い頃、結婚式に参列したとき目の前に出てきた、これまで見たことがないほど美しく、これまで食べたことがないほど美味しいお料理の数々。自分が口にした時の驚き以上に、私の記憶に残っているのは、「わあ、すごい!」と驚くゲストの方たちの様子でした。大人があんな顔をして驚くなんて。まだ幼い頃に経験した衝撃が、「私も料理人になって、みんなが驚くような料理をつくりたい」という将来の夢になりました。

高校は調理コースのある学校に進み、「婚礼料理といえば」である洋食を3年間専門に学びました。就活の際見て回ったのは、もちろん婚礼料理を手がける会社。いくつかの会社に足を運ぶ中で八芳園を選んだのは、お客様一人ひとりに向き合おうとするおもてなしの心を感じたこと。そして何よりの決め手だったのは、Thrush Caféのオープンキッチンでした。お客様の目の前で鮮やかに料理を仕上げていく料理人たちの姿に心射抜かれ、自分が人前で緊張しがちなタイプであることも忘れて、「ここだ!」と思ったのです。

「絶対できる」と信じてもらったら、本当にできるようになる。

入社後はまずは本館に配属され、婚礼料理に専念。ここで、最初の壁にぶつかります。お客様にお料理のご説明をする際に緊張で言葉が出ず、固まってしまうことが多々あったのです。そんな時、先輩は必ず一歩後ろで見守ってくれて、「大丈夫。できるから」と信じて待っていてくれました。助け舟を出したり、説明を代わったりする方がきっと簡単だったと思いますが、「絶対できる」と信じてくれたことで、いつしかお客様の前でも言葉が出るようになっていました。

八芳園外で調理を行う経験にも恵まれました。最もチャレンジングだったのは、八芳園の調理スタッフ数名でミシュランの星つきのお店にサポートに行ったこと。一流のシェフの技術を間近で見ながら、何百人という単位のゲストに向けて非常に手の込んだ料理をつくりあげていく経験は刺激的で、成功した時は大きな達成感に包まれました。実はその後ご縁がつながり、シェフのご友人の料理人の方が八芳園で式を挙げてくださったのです。ある意味では最高峰レベルの「舌」を持つ方の披露宴。しかしこれは大きなチャンスだと思った私は、思い切って仕込みと発注の責任者に立候補し、初めて周囲に指示を出す役割を担いました。とても勇気がいることでしたが、先輩に支えられながら、披露宴は無事成功。自信がついたことが、その後のThrush Caféへの異動につながっていきます。

お客様のため、手が抜ける仕事なんて一つもない。

3年目の冬。ついに憧れのThrush Caféへの異動が決まりました。2ヶ月に一度メニューが変わるThrush Caféでは、新しいメニューの開発を経験するチャンスが頻繁に巡ってきて、アイデアや引き出しの数をこれでもかと試されます。この環境で格段に深まったのが、野菜に関する知識です。農園まで赴き、生産者さんに育てている野菜の栽培の仕方や特徴などを教わりながら、収穫して、調理をして、お客様にお出しする。そんな日々を送るうちに野菜への愛着が増し、「味をつける」のではなく「素材の味を活かす」ことへの知見が深まっていきました。野菜の根など、以前までは捨ててしまっていたような部分も無駄を出さず、食材の全てを美味しく味わっていただくサステナブルなお料理にするという意識も、この環境によって生まれたことの一つです。

いかにも順調な三年間のように思われるかもしれませんが、挑戦が多い分、失敗だってもちろんあります。例えば、発注と仕込みの段取りを任せてもらった際、見込まれるお客様の数だけ食材の発注をしようとしたことがありました。食材のロスがないようにと考えての判断でしたが、先輩からは「週末、お客様が召し上がりたいお料理があっても、ご提供できなくなってしまうかもよ」と指摘をもらいました。確かに、仕入れ量や頻度は私たちの都合でしかない。お客様の目線が抜けていたことに反省した出来事でした。自分のやることや判断は、すべてお客様につながっている。だから、料理は調理以外にも手が抜ける仕事なんて一つもない。任せていただけることの大きさに、改めて身が引き締まる思いでした。 

苦手意識を超えるほどの、「やってみたい!」にまた出会えた。

Thrush Caféのオープンキッチンに憧れて入社して4年。私の夢は、新たに更新されました。「園外に八芳園として初めての割烹料亭をつくる」と会社から発表があったのです。これまでの八芳園のレストランとは全く異なる、新しいコンセプトを掲げるそのお店は、上質かつThrush Caféのように料理人がお客様の目の前で料理をするスタイルで、話を聞いた瞬間から「ここで働きたい!」と思いました。

これまでは洋食をメインにしてきましたが、割烹は和食です。実は私は高校時代、魚を捌くのがとても苦手で、試験にもなかなか合格できなかったほど。その苦手意識が和食に進まなかった理由でもあります。しかし、今は不思議と「やってみよう。練習すればうまくなるはず」と自然と前向きに思えます。若手に大胆に任せてくれて、失敗に対しても寛容で、次に活かせるよう導いてくれる調理チームの雰囲気。そして、次々と心躍る選択肢を見せてくれる八芳園の存在が私の性格を変えてくれたのだと思います。新しい夢の舞台を目標に、まずは料亭 壺中庵で和食の経験を積みたいと転属希望を出し、修行のため4年目の10月から壺中庵で働くことに。盛り付けからのスタートですが、いちから学び始めることに躊躇いはありません。かつて、Thrush Caféのオープンキッチンで働く料理人の方に憧れて八芳園に入社を決めた私。次はオープンキッチンで働く私の姿を見て、八芳園に入社する人が生まれてくれたら。憧れに導かれてきた料理人人生が、次は誰かの憧れとなって道標を作ることができたら、こんなに嬉しいことはありません。 

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